「微量栄養素の重要性」 “CaとMgを中心に” |
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講師 和洋女子大学家政学部 健康栄養学科 教授 橋詰 直孝先生 | |||
T.高Ca血症 | |||
1. | 原発性副甲状腺機能亢進症 | ||
2. | ビタミンD過剰 | ||
3. | 悪性腫瘍 | ||
(1)骨転移による骨吸収の亢進 | |||
(2)PTH関連ペプチドの体液性因子産生 | |||
4. | その他 | ||
(1)長期臥床による不動化 (2)家族性低Ca尿性高Ca血症 (3)ミルクアルカリ症候群 (4)サルコイドーシス (5)甲状腺機能亢進症 |
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高Ca血症の症状は、腎、消化器、骨、神経・筋、中枢神経、心・血管に現れ、多尿・関節痛・筋力低下・記憶力低下・ジキタリス感受性にまで至り、症状は様々であり、所見で見逃すことも多い。転科時の血液検査データでは、Caと共に、iPTH(PTH‐INTACT:副甲状腺ホルモン)の数値を参考にし、治療には利尿剤・カルシトニン製剤を投与する。 | |||
U.低Ca血症 | |||
1. | 副甲状腺機能低下症 | ||
(1)特発性副甲状腺機能低下症 (2)続発性副甲状腺機能低下症 (3)偽性副甲状腺機能低下症 |
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2. | ビタミンD欠乏症及び不応症 | ||
3. | 慢性腎不全 | ||
4. | 吸収不全症候群 | ||
5. | 腎からのCa損質の増大 | ||
6. | Hungury bone症候群 | ||
7. | 急性膵炎 | ||
8. | 低蛋白血症による見かけ上の低Ca血症 | ||
低Ca血症の症状は、神経・筋、中枢神経、骨、消化器、腎、心・血管等に現れ、テタニー・全身痙攣・抑うつ・骨粗鬆症・象牙形成不全に至り、所見ではTrousseau兆候・Chvostek兆候やEEGの変化に現れ、尿中のアルドステロンの増加・多尿が見られる。不定愁訴が多く、自律神経失調と診断される場合が多い。 ビタミンD欠乏症で、小児期にはくる病(小人症・長頭症・鳩胸・念珠・骨端部の拡大・下肢湾曲)、成人期には骨軟化症が現れる。 |
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V.Mg欠乏 | |||
Mg欠乏で、細胞内膜のNa-K-ATPaseの活性化が障害される。(筋肉中のMg欠乏により、Na-K-ポンプは、血管内のKを引き込み、Naが血管内に入り込むことで作用する、ATP→ADPになることを障害する。) | |||
W.高Mg血症 | |||
高Mg血症を起こす病態は、腎機能の状態により分類する。 | |||
1. | 腎機能(正常) | ||
(1)Mgの過剰摂取 制酸剤・下剤・高Mg浸透液・薬剤療法 Mg負荷テスト (2)腸管吸収亢進 ビタミンD・リチウム (3)腎再吸収亢進 甲状腺機能低下症・アジソン病 末端巨大症・家族性低Ca排泄尿症 (4)その他 急性肝炎・糖尿病性ケトアシドーシス 白血病・脱水ミルクアルカリ症候群 組織崩壊 |
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2. | 腎機能(低下) | ||
(1)急性腎不全 (2)慢性腎不全 (3)透析患者 高Mg血症の症状は、排尿障害・倦怠感・構音障害・運動障害・無関心・筋力低下等で出現し、血液検査データがMg3mg/dl以上にならないと症状としては現れない。 糖尿病性腎症で、インスリン療法と人工透析治療中の症例では、四肢脱力で歩行障害・不随意運動・嚥下困難・尿失禁出現で、神経学的所見でも小脳失調・筋萎縮・筋力の低下もない。血液検査データから、透析液とMgを含む内服薬(胃薬・便秘薬として酸化Mg)を見直し、内服薬の中止で症状が消失する。 この症例経験をきっかけに入院患者全員の血清Mgを調査された。 |
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現場での血液検査データをエビデンスに基づき、読む力とそれをデザインする力を学ぶことの必要性を感じた。 | |||
(文責 地活 Y.T ) |