吹田市民病院 内科 藤野 隆興 著
COPDとは、chronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患)の略称である。1999年の日本呼吸器学会の定義では「肺気腫、慢性気管支炎または両者の併発により惹起される閉塞性換気障害を特徴とする疾患である」とされている。2001年に米国で発表されたGOLDガイドラインでは「完全には可逆性ではない気流制限に特徴付けられる病態である。気流制限は、通常進行性であり、有害な粒子あるいはガスに対する肺の炎症反応と関連している」となっている。肺気腫と慢性気管支炎という区別をせず「炎症性疾患」という側面を強調している。
COPDの危険因子としては、環境因子としての喫煙、大気汚染、粉塵や化学物質への曝露などがあり、また個体側の因子として遺伝的要因、気道過敏性などが挙げられる。喫煙はCOPDの病因となりうることが明確に示されている。
肺の慢性炎症により、粘液の過剰分泌、気道の狭窄、線維化、肺実質の破壊による気腫化などを生じる。生理的変化としては肺の過膨張、ガス交換の異常、肺高血圧、肺性心などがある。 これらによって、長期間続く咳、痰といった症状、労作時の呼吸困難といった症状が進行性に認められる。
患者の殆どはヘビースモーカーであり、長期に咳や痰といった症状を呈していることが多いが、加齢に伴い労作時の息切れが出現し受診することが少なくない。スパイロメトリー(呼吸機能検査)は症状の出現の数年前から異常を示すことが多く、早期発見に有用である。スパイロメトリーでは1秒量(FEV1)と努力性肺活量(FVC)の低下を示す。GOLDでは、「完全に可逆的でない気流制限(FEV1/FVC<70%、気管支拡張薬吸入後のFEV1<80%予測値)がみられた場合にCOPDと診断する」としている。 総合的には、病歴、身体所見を確認し、胸部X線写真やCT写真にて肺の過膨張や気腫性変化を評価し、スパイロメトリーや動脈血ガス分析を用いて診断する。
まず禁煙は第一である。薬物療法としては、種々の気管支拡張剤として抗コリン薬とβ2受容体刺激薬、テオフィリン製剤がある。
抗コリン薬は、気管支平滑筋の収縮を抑制する。現在用いられているものは吸入薬である。これら抗コリン薬は1秒量の増加、機能的残気量の減少、運動耐容能の増加、呼吸困難感の軽減といった効果をもつ。安全性が高く、長期使用による耐性や呼吸機能の低下はみられない。
β2刺激薬はより末梢の細気管支の拡張効果を期待できる。短時間作用型と長時間作用型がある。急性症状の緩和には短時間作用型の効果が良く、GOLDでも推奨されている。長期的コントロールには長時間作用型が推奨され、抗コリン薬に準じる臨床効果が示されている。これらの併用については様々な研究があるが、併用効果や安全性については今後の検討が必要であろう。
テオフィリン製剤には様々な薬理作用があり、呼吸困難感などの自覚症状を軽減することがあるが、気管支拡張効果はあまり高くなく、抗コリン薬やβ2刺激薬との併用と位置づけられている。
ステロイド剤については、吸入ステロイド薬の有効な症例が一部にみられるが長期的な呼吸機能障害の進行は抑制できないことが明らかになっている。急性増悪期における全身投与については一定の効果が示されている。
低酸素血症が進行し、安静時のPO2が55Torr以下の症例、もしくは55Torr以上60Torr以下でも明らかな肺性心、肺高血圧症、睡眠中あるいは運動時に著しい低酸素血症となれば在宅酸素療法(HOT)の適応となる。酸素療法によって、生存率の向上、ADLやQOLの改善、入院回数の減少などの恩恵がもたらされている。
GOLDのガイドラインにおいては、呼吸理学療法によって運動能力の増大、自覚的呼吸困難感の減少、健康関連QOLの改善などがもたらされることから、中等度〜重症のCOPD症例に対してこれが治療の第一選択に並んでいる。呼吸訓練、胸郭可動域訓練、排痰法、運動療法、ADL訓練などを組み合わせる。
外科治療として肺容量減少術(LVRS)というものがある。しかしその適応には様々な基準があり、全ての症例が対象になるわけではない。
COPDに対しては肺移植という究極の手段もある。これにも様々な適応基準があり、また症例が少ないため長期生存率についてまだ確立したデータは報告されていない。
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