疲労と栄養管理 講演 II
「科学に基づいた疲労回復法」

講師 大阪市立大学大学院医学研究科・システム神経科学 教授 渡辺 恭良先生

はじめに

日本人の59%が疲労感を感じていて、その中の37%が6カ月以上もの長い間、疲れている慢性的な疲労を感じている。疲れのとれないうちに次の日の生活が始まっている。

疲労とは(原因はあまりわかっていない)

  1. 休めを命ずる重要な生体アラーム(警報)
    • 疲労が休息・眠りで治る場合
    • 一晩で取れる場合
    • 週・月の単位で長く続く場合
  2. ストレス過多で陥る状態
  3. 多数の病気の未病
  4. 多数の疾患で見られる症状の1つ

疲れの原因

  • 運動(マラソン選手はレース間隔をあけるなど)
  • 睡眠リズム障害(子供の場合など)
  • 消耗性疾患(サイトカインなど)
  • 感染性疾患(サイトカインなど)
  • 環境ストレス(夏バテなど)
  • 精神ストレス(人間関係など)

疲労感のメカニズム

頭(脳)で感じるのは、脳神経機構による。  末梢性疲労の場合は、脳へのシグナル伝達機構がある。

研究の進め方

ヒトにおける研究・慢性疲労臨床や、動物を用いた研究、霊長類を用いた研究などがある。

ヒトの疲労の分類

病的でない疲労は、激しい運動によるもの、精神作業によるもの、環境・免疫反応によるもの、複合のものがある。  病的な疲労には、診断の付いた病気によるものと慢性疲労症候群のものがある。

慢性疲労症候群(CFS)

病因として、感染症、特にウィルス感染がある。 特徴として

  • 微熱、疲労感、思考低下、関節の痛み
  • 免疫力低下(疲労シグナル産生、自殺細胞の増加)
  • ウィルスの再活性化 ・内分泌異常(DHEA−S)
  • アシルカルニチンの低下

疲労神経回路とは(CFS)

  • 急性から慢性化となっていく
  • 疲労とは、遺伝因子と環境因子よりなる
  • セロトニンのトランスポーター回収率が低い

動物モデルを用いた高抗疲労素材の関係

疲れきってから、立ち上がるまでの時間を計測する。

  • 脳グルコース取り込みが低下する
  • モノアミン系が異常になる
  • ミトコンドリアが異常になる
  • 遺伝子発現の変化がある
  • サイトカインが出る

疲労感を感じる存在証明

疲労負荷にサッカリンを加えると疲れることにより、疲労神経回路の存在証明(セロトニン1A受容体系の関与)がある。  運動による乳酸は、ATP産生がグルコースより早く、疲労の原因ではない。

疲労の原因

いくつかのペプチドによるものである。あと1年後には分子レベルで解明できるであろう。

動物実験による結果

 ぐっすり眠れない状態にする(ゲージに水を1.5cmはる)と疲労は5日間で半減するが、ぐっすり眠れる状態にする(水を除く)と1日で回復する。セロトニンとドーパミンが減り、BH4(葉酸と似ている)が増える。

疲労回復法

大変効果のあるものは、笑い・マニマルセラピー・アロマセラピー緑の香り(森林の香りのようなもの)  ある程度効果のあるものは、ビタモンC・アセチンカルニチン・DHE・クエン酸・フルスルチアミン あまり効果のないものは、乳酸・ビタミンB1

これからの研究について、先生よりの紹介

  • 21世紀COEプログラム
  • 見えてきた疲労のメカニズム

(文責 研究教育 U.K)

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